Trans* Issues

トランスジェンダーに関する英語や日本語の記事を紹介

新しい診断コードはトランスジェンダーに対するスティグマを低減させる

New Diagnostic Codes Lessen Stigma for Transgender People
Jack Drescher, MD

2017/9/11 Medscape

https://www.medscape.com/viewarticle/885141

全訳

こんにちは。ニューヨーク市コロンビア大学精神科臨床学教授で、アメリカ精神医学会終身名誉フェローのジャック・ドレシャーです。私は、2013年に発表された「精神障害の診断と統計マニュアル」第5版(DSM-5)と、2018年に公開が予定されている「国際疾病分類」第11版(ICD-11)における自分の仕事について少しばかりお話しするためにここにいます。

私は性障害および性同一性障害に関するDSM-5の作業部会のメンバーでした。その委員会の役割はDSM-IVでは性障害および性同一性障害と呼ばれていたものを改訂することでした。私の属していた、特に性同一性障害にフォーカスした下位の作業部会は、1973年にDSM-IIから同性愛が診断カテゴリーとして取り除かれたのと同様に、DSMから性同一性障害という診断カテゴリーは、そのスティグマ化する性質のために取り除かれるべきだという要求と和解するよう求められました。

しかしながら、私たちの作業部会は、診断カテゴリーの削除は非常に問題であると結論付けました。なぜなら、様々なサービスにアクセスするためには、診断が必要であるからです。私たちはケアへのアクセスと、精神医学的な診断に伴うスティグマの間の板挟みになりました。それを必要としている人がいるなら、スティグマ精神疾患の診断カテゴリーを削除する十分な理由とはならないのです。

性障害および性同一性障害DSMから単純に削除することはできないと私たちは決定しました。一部の人は、これをVコードに分類することを提案しました。多くの方々がご存知のように、Vコードは精神疾患ではないが、メンタルヘルスの専門家の対応下におかれる可能性のある状態のために用いられます。しかしこれらの状態はほとんどの保険会社や多くの国のヘルスケアシステムにおいて給付を受けることができませんし、給付を要求するものと見なされていません。したがって、私たちはこれをVコードに分類することができませんでした。代わりに私たちは、診断カテゴリーを維持するが、スティグマを減少させるようないくつかの変更を行うことを決定しました。

小さくて意味のある変更

スティグマを減少させる一つの方法が「障害(disorder)」という語を削除することでした。私たちは性同一性障害から性別違和へと名前を変更しました。性別違和は元から文献に存在していた用語です。この領域で仕事をしている多くの人々がこの用語を認識しており、性同一性障害の診断カテゴリーに反対していた多くの人々がこの名前の変更を喜びました。

私たちはまた、望まない人に対して診断を下すことは望ましくないという考えから、診断基準を狭め、偽陽性の数を減らすことを試みました。DSM-IVよりも診断基準を少し厳格にしたのです。

性別違和を持つ人が治療を受け、法的な氏名変更を行ったとします。この人にはもう性別違和がありません。このことは、その人は診断を受けないということを意味するのでしょうか?そうです、そのような人には性別違和の症状がありませんが、仮に治療を受けなかったとすれば、症状があったでしょう。私たちはDSMに性別移行後という特定用語(specifier)の概念を導入しました。治療を受け、性別違和を持たないがかつて持っていたという人も、診断コードを持つことができます。こうして私たちはDSMにおけるこの問題を解決しました。

加えて、私たちは性的指向に関する特定用語を削除しました。いくつかの理由から、性的指向が性別移行の決定に関係しているかどうかということが問題になる時代がありました。例えば、20世紀の半ばには、もしあなたが男性に生まれ、出生時に男性と割り当てられ、女性に惹かれるが、自分は女性であると確信し性別移行を望むとしても、医者に自分は女性に惹かれると伝えることはできませんでした。医者たちは治療において最終的に異性愛者を作り出すことにしか関与しなかったのです。彼らは、最終的に同じジェンダーに惹かれるであろう人々を移行させることで、レズビアンやゲイ男性を作り出そうとはしませんでした。このことは今日臨床家が実践している枠組みにおいては問題ではありませんが、当時は問題だったのです。したがって、私たちは性的指向の特定用語を、臨床上の仕事に無関係であるという理由で削除しました。これらはDSMにおける変更の一部です。

私たちはまた、国際的なレベルにおいても若干の変更を行いました。世界保健機関(WHO)のICD-11は2018年に公開されます。ICDには、診断カテゴリーを入れるか出すかのどちらかしかないDSMと比較して、より柔軟性があります。ICDは精神医学と医学のすべての診断カテゴリーを含むものです。採用された提言は、性別不合(gender incongruence)と呼ばれる新しい診断カテゴリーを、精神疾患のセクションから「性の健康に関する状態」と呼ばれる別の章へと移動させるというものです。これは国家的なヘルスケアシステムを持つ国々が診断コードを設け、人々にケアを提供し続けつつ、精神疾患スティグマを減少させることを可能にします。

トランスジェンダーの人々は高度にスティグマ化された患者集団です。これはスティグマを減少させる一つの方法です。実際は、私たちは何がトランスジェンダー的な表現の原因なのかを知りません。それが精神医学的なものなのか、医学的なものなのかを知りませんし、それは私たちがなぜ人々がシスジェンダー(非トランスジェンダー)であるかを知らないのとまったく同じことなのです。この変更は一つの新しい診断カテゴリーを提示するものです。それがgender incongruenceなのです。

ご清聴ありがとうございました。ジャック・ドレシャーでした。