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ギリシャ、性別変更法を可決。正教会は反対【まとめ】

2017/10/10 The Guardian

www.theguardian.com

記事のざっくりしたまとめ

  • アレクシス・チプラス率いるギリシャの左翼政府は、15歳以上の市民が精神科医による診断や不妊化なしに法的に性自認を決定することを可能にする法律を可決した。
  • 171対114で可決されたこの法律は、ヨーロッパにおいて社会的に最も保守的な国の一つであるギリシャの政治的な分裂と強固な信念を露わにした。野党は少数を除いて反対。中道右派政党New Democracyの党首Kyriakos Mitsotakisは、このような人生を左右する決定権を18歳未満に与えるのは誤りだと述べた。
  • また正教会もこの法律に反対。神が男と女を創造したのであって、「男性が誰でも簡単に女性になることができ、女性は男性になれる。これは悪魔的な所業だ」として糾弾。
  • 司教らはこの法律には隠れた目的があり、それは同性カップルが養子を取ることを可能にすることだと主張。この主張はネオ・ファシストのGolden Dawn党の見解と共鳴。
  • この性別変更法により、公的な記録、登録や書類は指定された性自認に適合される。これには出生証明書と学校の卒業証書を含む。
  • ギリシャは、デンマークアイルランド、マルタ、ノルウェーに並び、性別変更に精神科医による診断も医学的な処置も必要としない法律を採用する国となった。これまでは、性別違和の診断と生殖器の除去がなされていなければ性別の変更はできなかった。

まとめ人コメント

 ギリシャで性別変更法が可決、とのニュースですが、この法律のポイントは何といっても、「精神科医による診断」「不妊化」のどちらも要求していない、というところですね。

性同一性障害」という概念があることからもわかるように、19世紀後半から20世紀を通じて、精神医学はジェンダーを変えて生きることに関する概念や枠組みに支配的な影響を及ぼしてきました。

しかし、1990年代以降、アメリカを中心としたトランスジェンダー運動の台頭とともに、ジェンダーを変えて生きることは精神医学の問題ではないし、そのために性器の手術が必須のものとされるのもおかしい、という声が高まっていきます。

そのような主張が法律の世界にも取り入れられるようになってきたのですね。

ちなみに日本にも俗に「GID性同一性障害)特例法」と呼ばれる性別変更法がありますが、この法律は「診断」「不妊化」両方を要求しています。

さらに(悪い意味で)特筆すべきことに、日本の性別変更法には「子なし要件」と呼ばれる、未成年の子を持つ親は戸籍の性別変更ができない、という要件があります。おそらく家や家族の秩序を重んじる日本の家父長的な価値観が反映されたのだと思いますが、このような要件は世界的に見て例がないそうです。

政治と社会

ギリシャ与党Syrizaの有力者Nikos Xydakisのコメントがぐっときたので紹介します。

政治家が社会よりもっと進歩的でなければならない時がある。ギリシャがEU諸国の中で、この問題に関していまや最もリベラルな国の一員になることを嬉しく思っている。

「国民の理解が追い付いていない」ことを理由に何もしない日本が想起されます。

課題

アムネスティのページでは、今回のギリシャの性別変更法の問題点もまとめられています。

「診断」「不妊化」以外の性別変更法に関する論点がまとめられた形になっていて興味深いです。

www.amnesty.or.jp